ムスカと息子

平凡な人間の平凡な日々を綴るブログ

page.73 「#写真を撮る理由」

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自分が写真を撮る理由を考えてみる。

 

 

独身時代からデジカメは持っていたけど、使い方やカメラの種類とかに全く疎かった。

絶景を撮りに行くわけでもない。

スナップのために撮り歩くわけでもない。

そんな感じだった気がする。

 

 

 

妻と結婚した頃をなんとなく思い出してみる。

 

 

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「お父さんね、1年持つかわからんやって。」

8年前の冬、母さんからそう聞いた。

母さんから親父の余命宣告を受け、これまで親父のためになにも親孝行できていなかったことに気がついた。

 

その当時、うちの兄弟は全員が結婚してなかった。

だからといったら安易な考えかもしれないけど、その頃の自分にできる親父への最大の親孝行は、息子の結婚姿を見せることだと思った。

 

 

 

母さんからの余命宣告を受けたときは、妻と付き合いはじめてまだ4ヶ月くらいだったと思う。

ちょうど妻と大阪のUSJへ旅行に行く前くらいだったかな。

親父のことがあったから、自分はこの旅行でプロポーズすることを心に決めていた。

 

クサいことはしたくない性分だけど、USJのクリスマスイルミネーションを見ながら、ちょっぴりロマンチックにプロポーズする計画をしていた。

ただ、あまりにも寒くてその場でプロポーズできなかったんだよなぁ…

 

翌日は大阪市内でいろいろ食い倒れてやろうと計画していたから、この日を逃せばプロポーズするタイミングが無いのは確実だった。

宿泊する千日前のホテルに向かう道中、「なんでUSJでプロポーズせんかったんやろ…」と心の中でへこみにへこみまくった。

 

ホテルに戻ってからは、冷えた身体を温めるためにすぐお風呂へ。

そしてベッドで一緒に横になって「今日は楽しかったね」って話をしながら眠りについた。

 

「いかん。プロポーズせずに旅行が終わってしまう。」

 

焦った自分は、妻が寝てしまわないよう、ひたすらくすぐった。

けど、互いに疲労困憊だったから、気を抜くとすぐ寝落ちしそうだった。

 

 

「結婚しよ。」

 

 

部屋の電気も消えて真っ暗な中、自分からの唐突なプロポーズ。

 

「いいよ。………ん?えっ??」

急なプロポーズにビックリした妻は、いいよと返事をしながらも理解が追いついてなかったみたいだった。

 

部屋の電気を点けて、正対しあった。

「嬉しい!ただ、なんでホテルのベッドの中なんよ!笑」

はい、そのとおりだと思います…苦笑

けど、嬉しそうな笑顔は今でもはっきり覚えている。

 

 

ちなみに、妻と付き合い始める少し前から親父は体調がよくなかったため、

「親が万が一のこともあるから、今の自分は結婚を前提じゃなきゃ付き合えない。」

とはっきり伝えていた。

けど、まさか付き合って4ヶ月でプロポーズされるとは思わないよね。

しかもお互い若かったし。

 

 

 

そこからは話がトントン拍子に進んでいった。

旅行後すぐに妻のご両親へ挨拶に伺い、妻もうちの母さんに挨拶を済ませた。

話がきちんと整ったあと、病室で寝たきりの親父へ報告に向かった。

 

「父さん、彼女と結婚することにしたから。」

 

病気が進行していて、親父が一日のうちに意識がはっきりとしているのはほんの数時間もあるかないか。

ただ、報告に行った時は偶然意識があるときだった。

病気で喋りにくくなっていたけど、カタコトの言葉で、精一杯声を振り絞って「おめでとう。息子をよろしくね。」と言ってくれた。

やっと一つ、親父に親孝行できた瞬間だった。

 

 

 

ここまできたら、いっそのこと結婚式を見てほしいと思えてきた。

実は結婚を決めた当初、妻と話し合って式は行わないことにしていた。

互いに蓄えも少なかったし、新婚生活に費用を残したいから。

 

ただ、妻が末っ子で最後の娘だったこともあり、向こうのご両親から「サポートするからやってみない?」と相談され、思い切ってすることに決めた。

ご両親は親父の心配もしてくれて、「お父様にも見せてあげようよ。」と言ってくれたのが心に残っている。

 

親父が生きているうちに見せたい。けど、仕事の都合もある。

いろいろと制約がある中で、ここという日を決めてやっと式場をおさえることができた。

打ち合わせは着々と進み、準備も順調にすることができた。

 

そして式まであと2ヶ月切っていたくらいの時だった。

 

 

「お父さん、亡くなったんよ。」

 

 

間に合わなかった。

 

もう少しだけ、親父に親孝行したかった。

自分の晴れ姿を、妻の姿を、親父に見てほしかった。

けど、間に合わなかった。

長くはないと知っていたから、ある程度の覚悟はできていたんだけど。

自分の願いは叶わなかった。

 

しかし、最悪の場合は想定した上で式の準備を進めていたから、中止ということは全く頭になかった。

 

けど、そこに追い打ちをかける出来事が。

父親が亡くなって約1ヶ月後、式まではあと1ヶ月くらいの時だった。

 

 

母さんから震えた声で、

「お姉ちゃんが亡くなった。」

と。

 

 

地元を離れて県外で暮らしていた姉だったが、社会人となってしばらく、心を病んでしまっていた。

それでも、なんとか持ちこたえていろいろと頑張っていたみたいだが、とあることがきっかけで自ら命を絶った。

 

父親が亡くなってまだ1ヶ月くらい、心身ともに疲弊している母さんにかわり、兄と自分で警察へ身元確認に行った。

そこには、微動だにしない横になった姉がいた。

 

 

さすがにこの時は心が落ちるところまで落ち込んだ。

正直、もう何も考えられない。

心が無になるっていう感覚なのかな。

何事も思考することができないくらい、心が無になっていた。

 

 

そんな自分を救ってくれたのが妻だった。

「辛いなら、自分の前では我慢せずに泣いていいんよ。泣いて少しでもラクになれるなら、私が受け止めるけん。」

 

泣いた。ひたすら泣いた。

それまでの人生で経験したことないくらい、嗚咽しながら泣いた。

 

けど、そのおかげで正気が保てた。

本当に妻に支えられた。

この人を人生の伴侶にして本当に良かったと思えた瞬間だった。

 

 

 

式まで1ヶ月くらいの時期だったこともあり、中止することが頭によぎった。

妻のご両親も「無理はしたらダメだよ。式は中止していいんだから。費用のことも心配しなくていいから。自分のことを、ご家族のことをまずは大事にしてね。」と言ってくれた。

 

ただ、妻に支えられたおかげで正気を保てたし、その妻のためにも、ご両親のためにも式をやりたいと思っていた。

そして、母さんのためにも、亡くなった親父や姉のためにも。

だから、周りの心配をはね飛ばすよう、予定どおり式を行うことを決めた。

 

 

そして迎えた式当日。

互いの職場関係は呼ばず、親族や気心しれた友人だけを呼んだこじんまりした規模で行った。

 

親父や姉を知っていて、自分とも非常に仲良くしてくれていた兄の友人も駆けつけてくれ、新郎の親族席は悲しみに包まれることは一切なかった。

席には親父と姉の写真を立てて、みんなで乾杯しあった。

親父も姉も酒が好きだったから、とても喜んでくれたんじゃないかな。

 

 

そして式の終盤、新郎である自分からの挨拶では、最後に母さんへ感謝の言葉を送った。

絶対に泣かず伝えよう。心に強く決めていた。

 

自分からの感謝の言葉を伝え始めると、母さんはたちまち号泣して泣き崩れていた。

親父の介護、姉の死去…母さんは気丈にふるまって、兄や自分に言葉で弱音は吐いてなかったけど、本当は崩れ落ちるところをなんとか耐えていただけだと思う。

母さんが号泣するのを横目に、結局自分も号泣してしまった。

鼻声で声も震え、伝えたいことも十分に伝えられた感じはなかったけど、大勢の前で母さんへ感謝の気持ちを伝えられたのは本当によかったと思う。

結婚式のおかげで、母さんにも親孝行できたかな。

 

 

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話は長くなった&逸れまくった感じが否めないけど、そういう背景があって妻と人生を共にしている。

そして愛犬であるムスカを迎え入れ、可愛い息子にも恵まれ、小さなマイホームで、小さな幸せを噛み締めながら、日々を暮らしている。

 

同世代と比べるわけではないが、人より家族の死と直面してきたからか、家族の写真を撮って遺すことが自分にとっての「#写真を撮る理由」なんだと思う。

だからこそ、これからも普通の日常を、何気ない家族の姿を撮って残していきたいと思う。

 

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写真をパッと見るだけでもいいけど、その人のバックボーンを知りながら見てみると、今までとは違った新しい視点で見れたりして楽しかったりすることないでしょうか。

逆に固定観念がついてしまって、ある一定の方向からしか見られなくなるリスクもあるけど。

 

SNS上で知り合った方々の写真を、今までとは違った視点で、どういう背景があって撮られているのか知りたいな、と思うことがあったりするんですよね。

ただ、それは向こうからバックボーンを晒してくれっていうことだから、そもそもこちら側から勝手に求めるものでもないし。

「そんなの必要ないでしょ」っていうのが多くの方の意見だと思います。

 

ただ、いつでもどこでも写真を撮りやすくなった今だからこそ、自分は写真を撮る理由を求めたくなるんですよね。

そして、みなさんはどういう思いで写真を撮られているのか知りたくて。

 

もし、こんな自分のどうでもいい考えに理解していただける方がいたら、「#写真を撮る理由」をつけてSNSなりブログなりで教えてほしいです。

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